クリスマス2
どこを見ても、カップル・カップル・カップル……
カップルだらけの街中を、私は幼馴染と歩いている。
やっぱり来なきゃ良かった。
目に毒だよ、この街は。今日は。
「あの歩道橋、登ると良いスポットらしいぜ」
良い、ってどう?
コウちゃんは長い足でスタスタ行ってしまう。
――もう!
あたしは決して背が高い方じゃなくて、むしろちっちゃいから、追いつくのも大変。
小走りで付いていってたら、コウちゃんは突然はっとして振り向いた。
頭かいて、急に、ゆっくり歩き出した。
……。
あれ? あたしに、合わせてる?
長い足で、歩幅を小さく、ゆっくり、ゆっくり。
あたしには丁度いいんだけど。
思いがけない気遣いに驚いた。
ゆっくりゆっくり、登った歩道橋からは、通りがキラキラキラキラ、物凄くキレイに見えた。
「うわ……」
知ってたんだけど。ここのイルミネーションが有名なのは。
知ってたんだけど。
カップルの頭の隙間から見えるきらめき。柄にも無くときめいてしまう。
耳タコのジングルベルまで、なんだかいい感じに聞こえてくるから現金なもんだ。
「ほら」
「えっ!?」
コウちゃんは、あたしの後ろに立って、ふっとかがんだと思ったらあたしの腰の辺りに両腕を回して、持ち上げた。
「この方が見えるだろ?」
急に高くなる視界。
見えるけど。見えるんだけど……っ
――どく、どく――
心臓が騒いで、急に顔が熱くなった。
周りのカップルは全然あたし達なんか目に入ってなくて、それぞれ勝手にいちゃついてて、だけど、だけど……
「ね、ねぇ、降ろして」
「ん、もういいの?」
コウちゃんはなんでもない事みたいに言って、あっさり降ろしてくれた。
早くなった心臓はまだ治まらない。
どく、どく、どく。。
「じゃ、次。メシにしようぜ。腹減ってんだろ」
コウちゃんは笑って、またゆっくり歩き出した。
ゆっくり歩いて、ファミレスへ向かう。
これって、なんだろう……。
デート、だよなぁ……
どうかんがえても。
コウちゃん……?
あたしが首捻って見上げたら、コウちゃんは機嫌よさそうな笑顔を向けて来た。
「ん? 何? 肉まんの方がいい?」
「え、いいよ、さっき食べたとこだもん」
「ふーん、朔美って肉まんで出来てんのかと思ってたけど」
「あ、阿呆か!」
「ははっ」
そんな風にして、辿り着いたファミレスで、クリスマスらしく?デザートにケーキまで食べたところで。急に、コウちゃんは真顔になった。
「朔美、今日ありがとな」
「え? 何、急に」
「うん。クリスマスなのに、つき合わせて」
「いいよ、別に。彼氏がいるワケでもないし」
「うん……。それなんだけどさ」
「うん?」
「つくらない?」
「は?」
「オレ。……どう?」
「…………は?」
思いっきりマヌケな顔してしまった、あたし。
口、パクパクさせて。何か言いたいんだけど、言葉なんか出なくって。
だって。
びっくりし過ぎて。
「ダメ?」
だって、びっくりし過ぎて……。
「朔美には、急かもしれないけどさ。オレは急じゃないんだ。オレは、ずっと好きだった」
びっくりし過ぎて、あたしは返事が出来なかった。
コウちゃんはしばらく待ってくれたんだけど……。
「朔美……?」
不安げに、コウちゃんがあたしを見る。
「……」
あたしは返事が、出来なかった。
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