ドラクエ2 〜エンディング〜


魔物が出なくなった海を、船は快調に走った。
波は穏やかで、やわらかな日差しを受けて水面がきらきらと反射している。
「見て、クッキー、魚が…」
プリンが甲板の手すりによりかかり、クッキーを振りかえった。
目を凝らすと、小さな魚が群れをなして泳いでいるのが見える。
「ほんとに…ほんとに世界は平和になったんだね〜」
クッキーは嬉しそうににこにこと笑った。何故か船酔いも起きず、上機嫌である。

「おう!俺たちの大活躍があってこそだ!!」

カカオは2人の背後から声をかけ、にっと笑った。
「あははっ…そうね、本当に…。わたし達が、取り戻したのよね。」
プリンが微笑んで、感慨深そうに2人を見つめる。
「うん、頑張ったよね〜!」
クッキーが手を差し出して、3人は固く握手を交わした。
「俺達は、正真正銘、英雄だっ」

船上に笑い声が響いた。

◆◇◆◇◆

船がローレシア城のある大陸へ辿りついた。
船を岸につけると、すぐにローレシアの兵士たち数人が馬車を走らせ3人を出迎えた。
「王子さまがたっ!この度のご活躍、誠にお見事でございましたっ」
「おうっ!」
カカオが得意げに返事して、クッキーとプリンも笑顔を向けた。

馬車が城下までやってくると、あっという間に民衆が押し寄せ馬車を取り囲んだ。口々に3人を褒め称え、感謝の言葉を述べる。馬車は民衆を掻き分けるようにして城門をくぐり抜けた。
城内に入ると、メイドたちがどっと押し寄せてカカオを取り巻いた。
「王子…本当にたくましくなられて。ステキですわ」
「まぁな!」
「王子様…!ご無事で良かったですわ…!」
カカオは鼻の下を伸ばしてでれでれと上機嫌だ。
プリンがふっと口を尖らせ目をそらすが、そんな事には気づかない。
「カカオ!」
クッキーは不機嫌そうにカカオを呼び、その腕をひっぱって歩き出した。
「早く王様のところへ行こうよ!」
「お?おう!」

3人が玉座の間へやって来ると、ラッパ隊がずらりと並んで待ち構えていた。
王が待ちかねたように立ちあがる。
「おお!よくぞ戻った!!」
「へへっ!帰ってきたぜっ!」
「さすが我が息子!ロトの血を引きし者だ!」
王は満面の笑みでくちゃくちゃになっている。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。
「本当に無事帰ってきて何よりだ…っ!」
カカオは慌てて慰めるように王の前に駆け寄った。
「おいおい、泣くなよ…っみっともねぇなぁ…っ」
…と、王は涙を擦り、すっと真顔になった。
そして突然とんでもない事を言い出した。
「今こそお前に王位を譲ろう!引き受けてくれるな?」

「!!?」

カカオは驚きのあまり言葉を失ってしまった。
あんぐりと口を開ける。

「…ん?どうした?引き受けてくれるな?」
カカオはいつの間にか握られていた両手を慌てて振りほどいた。
「じょ、冗談じゃねぇっ!!何で急にそんな…!!」
慌てふためくカカオに、クッキーがにこにこ笑いながら声をかけた。
「え〜?カカオ、照れるなんてらしくないよ〜」

「照れてねぇっ!!!」

カカオは怒りで顔を真っ赤にしてクッキーを怒鳴りつけた。クッキーが慌てて両手で口を塞ぐ。
「ええい、ワガママを言うでない!!今こそ王位を譲ろうというに、なんじゃその態度は!」
今度は王が怒り出した。
「ふざけんなっ!俺に政治が出来ると思ってんのかよっ!!」
キッと父王を睨みつける。両者とも1歩も引かない気迫である。
「政治力なんぞ必要無い!!必要なのは民衆の熱い期待、人気、人望なのだ!その点今のお前は申し分無い!!なぁに政治なんぞはわしや大臣たちがやってやるわ!お前はこの玉座に腰掛けておればそれで良いのじゃ!!」
「ななななんだと…っ?!」
王のあまりの言い様にカカオは愕然としてしまった。
と、プリンがくすくす笑いながら言った。
「ふふふっ…いいじゃない。どうせあなたはいずれ王様になるのよ。もう観念したら?」
「ああ?!てめぇ他人事だと思って何を無責任な…」
カカオが再び怒りながらプリンを振りかえる。
王はそんなカカオの背後に回り、
「ほれほれ、良いから座れ」
とカカオの背中をとん…っと押した。
王に促され、ついうっかりカカオは玉座に腰掛けてしまった。
その、瞬間。
王は高らかに宣言した。

「新しい王の誕生じゃ!!」

示し合わせたようにラッパ隊のファンファーレが鳴り響く。
城下に押し寄せている民衆からもものすごい歓声が巻き起こりローレシア城を揺るがした。

「な、な…!」
呆気に取られるカカオ1人を取り残し、国中が異様な盛り上がりを見せた。


こうして、カカオはローレシアの国王となった。



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